[1-1] 収益構造から理解する不動産投資の利益の源泉

結局のところ一棟収益不動産投資はどこから利益が生まれるのか。
この記事では不動産投資の全体像と利益の源泉をはっきりさせたいと思います。

不動産の収益構造

まずは収益不動産の収益構造をおさらいしておきます。キャッシュフローの出る都心の一棟収益不動産を取得した場合、収益構造は下の図1-1のようになります。

図1-1_不動産の収益構造

このときの所有者・投資家の心情としては下記のような感じです。

① 「満室だったらこれくらい賃料が入るはずなんだけど」
② 「そもそも空室があるし、そこから固定資産税・都市計画税、消防点検、水槽メンテ費用、エレベーター保守料、共用部分水道光熱費、PM会社フィー、テナント募集仲介手数料及びAD、原状回復費、修繕費、火災保険を払うとなると」
③ 「正味の賃料収入はこれくらいしか残らない」
④ 「そこから金融機関からお借りしている分の元金返済して」
⑤ 「その手数料たる金利を支払って」
⑥ 「これだけのキャッシュフローしか残らないのか」
⑦ 「建物の減価償却費はキャッシュアウトなしで経費になるけど、④元金返済分はキャシュアウトだけど経費にはもちろんならなくて、④元金返済分+⑥キャッシュフローに税金がかかってくるんだから、税引後のキャッシュフローはもっと少なくなる。元利均等返済だから、元金返済分が増えていって、元金返済分>建物減価償却分になったらデットクロスというやつで、もっと税引後キャッシュフローを圧迫していくなぁ」

さて、図1の①〜⑦のうち、不動産投資の利益の源泉はどれでしょうか?
やはり、⑥のキャッシュフローでしょうか?いや、⑦の税引き後のキャッシュフローでしょうか。

違います。多くの場合、都心の一棟収益不動産投資において最大の利益の源泉は④元金返済です。

不動産投資の利益の源泉は元金返済(純資産の増加)

図1は保有中の収益構造でしたが、今度は不動産取得から、売却までのキャッシュフローをみてみましょう。下の図1-2は弊社がかつて所有していた物件を参考に作成したグラフです(実際の収支とは異なります)。

図1-2

1年目は物件取得のために頭金をいれたり、仲介手数料や不動産取得税、所有権移転登録免許税、抵当権設定費用を支払うため、物件単体で見ればキャッシュフローがマイナスになることも多いでしょう。

それ以後は、安定的に賃貸ができさえすれば、大規模修繕などをしない限り、キャッシュフローは安定します。そして物件売却時には、このように非常に大きな現金が手元に残ります。

もうお分かりの通り、この売却時の大きな現金は毎月の元金返済から生まれたのです。当然のことながら、元金返済は純資産の増加であり、それが最後に売却によって現金化されただけです。イメージとしては下図1-3のようになります。点線で囲った部分が保有中の元金返済です。

図1-3

保有中の元金返済を“コンクリート貯金”と呼ぶ人がいるのも頷けます。投資スタイルにもよりますが、キャッシュフローはおまけ程度と考えてもよいでしょう。不動産投資の主目的は元金返済(純資産の増加)であり、必要な時に現金化すれば良いと割り切ってしまってもよいと思います。(売却せずとも溜まった純資産を現金化することもできます。

蓄積した純資産を現金化できるかどうかは、物件の出口価格次第

さて、図2や図3の中には重要な文言が含まれているのをお気づきでしょうか。


グラフタイトルは「一棟収益不動産を取得時と同じ価格で10年目に売却したときの税引後キャッシュフロー例」でした。“取得時と同じ価格で”という条件がありました。毎月返済してきた元金を現金化できるのか、無に帰すのかは売却価格にかかっています。

図1-4

例えば、上図1-4のようにキャッシュフローはでるものの、大きな売却損がでるような物件は投資不適格です。純資産の増加であったはずの元金返済分だけでなく、保有中に得ていたキャッシュフローまで帳消しになっています。

取得価格のうち建物の価格割合が高い地方の物件を、見た目の利回りにつられて買ってしまったものの、残債があまり減っていないうちに売却しなければならなくなった場合などはこのようになりがちです。

逆に、下図1-5のように保有中のキャッシュフローはマイナス(毎月6-7万円キャッシュアウト)であっても、売却した時に蓄積した純資産がきちんと現金化でき、またそれ以上に値上がり益も期待できるような物件であれば投資対象になりえます。例えば、都心の物件で、利回りはそれほど高くないが、価格が土地値に近いものなどです。

図1-5

収益構造から理解する不動産投資の利益の源泉まとめ

不動産の賃貸は建物や土地を借りてくださるお客様がいて、所有資産を管理運営しながら収益を上げていく事業です。しかし、買った物を売ることで初めて全体の利益が確定するという点では投資でもあります。

保有中のキャッシュフローだけではなく、元金返済も不動産投資の利益源泉であることを理解し、その純資産の増加を最後にきちんと現金化できる不動産(価格の下がりにくい不動産、あわよくば値上がり益を狙える不動産)を取得することが重要です。

次回の記事では数ある一棟収益不動産の中から取得するべきものを見分けるため、不動産の価値(価格ではない)について考えてみたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。引き続き宜しくお願い致します。