[1-3] 不動産投資におけるエリアの価値(廃れないエリアを選ぶ)

不動産投資におけるエリアの価値

そもそも不動産の価値の本質は土地や建物そのものにあるのではありません。あるエリア(街や町)に価値があって、そのエリアがエリア内の土地や建物に価値を付与しています。

引っ越しを考えている人や、商売を始めようとしている人がまず決めるのはエリアです。投資家の皆様も物件概要書を見たらまず最初に「ここは活気があって、住環境も良い。将来にわたって廃れなさそうだな」などと、無意識のうちに判定されていると思います。

僕は、エリアの価値とは、現在から将来にわたって人々に「そこで働きたい」「そこに住みたい」「そこへ遊びにいきたい」「そこへ買い物にいきたい」と思わせる訴求力の総体と考えています。

また、不動産賃貸業者、一棟収益不動産投資家としては、レジにしろオフィスにしろ店舗にしろ、「少なくとも現在は供給過剰ではないこと」「中長期的にも中〜強の賃貸需要が見込めること」をエリアの価値と捉えています。

不動産投資家のエリアの価値判定

まず、市区単位で基本的なデータを一応頭にいれておきます。僕はデータありきで不動産投資をするのには否定的(後述)なのですが、それでもよく知っている地域について改めて数字を眺めてみると発見があります。(大阪関連のリンク多めでです。すみません。

  • 人の動き
    • 人口推移
    • 世帯数推移
    • 年齢別人口動態
      • 国勢調査等の生データにあたるより、各自治体が出しているレポートを読んだほうが早くてわかりやすいです。大阪市なら「大阪市の推計人口年報
      • 地域経済分析システム
        左上のメインメニュー>人口マップ>人口増減>市区町村単位で表示、メッシュマップ表示などができます。
      • 都市データパック
      • 地域経済総覧
        地域経済総覧には新設住宅着工床面積なども市区町村別、年度別、利用関係別(持家・貸家・分譲住宅)でまとめられていて参考になります。生データである国土交通省の建築着工統計を見るよりわかりやすいです。
  • アクセス・施設
    • 主要道路、バス路線
    • コア施設(大型商業施設、大学、大企業、工場等)
      その施設がなくなったら、需要が消滅するような1点賭けエリアは避ける。

そして、地図を見ながらエリア毎に賃料相場や施設、主要駅を確認して、その区だったら区の中で、どのエリアに人が集積しているのか、何となく把握します。(調べなくても感覚でわかっている場合も多いと思いますが改めて調べてみましょう。

  • 賃貸データ
    • 賃料相場
    • 敷金礼金ゼロゼロ物件比率(ゼロゼロ物件が多い=客付けに苦戦するエリア)
      • ホームズやSUUMOなどのポータルサイトである程度把握。新築プレミアムは除外する。大阪市内の15万件の賃貸データを集めてExcelで各駅、徒歩分、築年数、間取、敷礼などでクロス集計して分析しています。※ 弊社に管理を委託していただいているお客様にお配りしているものと同じ

    • オーナーや管理会社からの広告料相場
      • レインズの図面で確認(不動産業者限定)。広告料2-4ヶ月が相場のエリアなどは賃貸市場が崩壊しつつあると考えてよい。そういうエリアで物件を持ってしまうと非常に苦労します。

その上で、

  • 人に聞く
    • エリアの賃貸業者にヒアリング。例えばレジデンスだったら
      • ○年前と比べてお客は増えたか?
      • 10代、20代、30代…どの年代のお客が一番多いか?
      • 一番客付けの数が多い価格帯、間取りは?
      • どのあたりが一番人気のエリアか?
      • 一番客付けに苦労するエリアは?
      • どのような間取りが足りない?
      • どのような間取りが余ってる? …etc
    • 飲み会などで、隣の席の人に「どこに住んでるの?そこ便利?」などと聞く

などをします。

それでも、不動産はデータより現場。

昭和の不動産屋みたいなことを言いますが、結局、不動産は現場です。どんなデータ、伝聞よりもそのエリアに自分で何度も何度も足を運んで「自分で見て、感じて、判断する」ことが非常に大切です。

例えば、ある地域の人口や世帯数が増えていたとしても、

「その地域の中で、エリアAは人が減っているが、エリアB は増えている。エリアBは駅前は増えているが、この道を超えると雰囲気ががらっと変わって、実際あまり賃貸需要がない。」

というような、現場でしか感じとれないことが沢山あります。その地域、そのエリア、その区画を自分がどう感じるか、そして自分の感覚を信じきれるか、そういう感覚も不動産投資では依然、重要です。

不動産投資におけるエリアの価値まとめ

要するに「売るときのことも考えて、自分の目で見て、売却まで価値が維持できると思われるエリアに投資しましょう」という投資家の皆様にとって至極当たり前のことでした。

また、それぞれのエリアの価値を自分なりに把握しておくことは、投資可能エリアを拡げることでもあり、失敗を減らすことでもあります。物件概要書の住所を見た段階でエリアの風景が目に浮かぶと、投資できる物件の見落とが少なくなりますし、何より初速、初動が全く違います。

そういう意味で、不動産投資はエリアを知ることから始まります。我々は土地や建物の前に、そのエリアの現在と未来に投資しているのです。次回はそのエリアの上にある、土地の価値について考えてみたいと思います。

おまけ 都市化のミルフィーユ

ここからは個人的な仮説になるのと、本文とも重複するので話半分で聞いてほしいのですが、僕はエリア判定の前提として

  1.  都市化(郊外から都心への人口移動)は当分続く。
  2.  フラクタル構造のようにその都市化の中にも都市化がある。

と考えています。1はお分かりだと思うので、2について補足します。

例えば、「日本の人口は減っているのになんで不動産投資なんかしてるの?」と聞かれたら、僕は大阪で投資をしているのでこのように答えます。

「地球の人口は増えている>日本の人口は減っている>東京都の人口は増えている>大阪府の人口は減っている>大阪市の人口は増えている>特に北区、西区、福島区、中央区などは年間2%ほど増えている」

「福島区でも福島駅近くは増えているが、大開あたりはあまり増えていない>西成区は65歳以上の高齢者が4割を占め人口は毎年減っているが、天下茶屋駅なんかは過去10年乗降車数は増えていて、実際行ってみると活気もあり賃貸需要は堅い」

「住宅が投資対象なら、人口よりも世帯数の方が重要。世帯数は主要都市全てで今も増えている。」

何を言いたいのかと言うと、たとえ見ているエリアデータがネガティブであっても、人の動きは無数の波の合成であるので、自分がそのエリアに足を運んで、もっとミクロな視点で観察して、

「この区画は人の集積が10年は続くだろう」とか
「間違いなく良い住環境だ」とか
「ここは最悪のエリアだけどこの物件であれば需要がシュリンクしてても15年は戦えるな」

などと思えれば自信をもってそこに投資したらよいということです。いつまでも自分の目を信じていたいですね。