[1-5] 不動産投資家のための土地のチェックポイント107項目

はじめに

一棟収益不動産の価格は建物が古くなるにつれて土地値に収斂しがちです。長期保有を前提に不動産投資をする場合、土地の価値と建物の価値を分けて考え、土地値割合が大きいと思われる物件を取得すれば、出口価格のダウンサイドは限定され、結果として全体の投資パフォーマンスはよくなります。

この記事では、僕が都心の一棟収益不動産や更地を取得するときに見ているポイントを自分の頭の整理も兼ねて書き出してみました。

こうして並べてみると、トリッキーな技や鋭い視点は何一つなく、土地の価値に関わる基本的な項目を一つひとつチェックしているだけでした。なお、記事タイトルの107という数字は適当です。また、自分用にまとめたこともあり大阪の例やリンクが多めです。すみません。

今回の記事は少し長いですが、不動産投資を始めようとしている方は参考にしてみてください。次回は建物編を書ければと思っています。

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(追記)次回は建物編のはずでしたが、建物のチェックを含めたスクリーニング記事になりました。宜しくお願い致します。
次の記事:[1-6]不動産投資家のための収益物件の選別手順127steps

土地のチェックポイント一覧

土地権利を確認

所有権 or 借地権

  • 所有権(一般的な売買)
    →「めちゃくちゃ安い!」と思って速攻で買付いれたら借地権だった、みたいなことがないようにきちんと確認しましょう。
  • 借地権
    →借地権投資をする場合はきちんと契約内容を確認しましょう。特に旧法か新法か。平成4年8月1日より前が旧法、以降が新法です。6つあります。
    • 地上権
    • 土地賃借権
      • (旧法)借地権
      • (新法)普通借地権
      • (新法)定期借地権
        • 一般定期借地権
        • 建物譲渡特約付き借地権
        • 事業用定期借地権

不動産登記簿謄本(登記事項証明書)で見る項目

  • 権利部(甲区)
    • 権利関係が複雑ではないか
      • 実際の所有者が不明の土地ではないか
      • 共有の場合売却の合意があるのか
    • 仮登記がないか。ある場合抹消される目処を仮登記権利者および所有者に確認する。
    • その他、買戻権、差押、仮差押、処分禁止仮処分の登記がないか
    • 話に聞いてる所有者と登記の所有者が同一ではない→中間省略、三為の可能性→割高に買わされそうになっていないか
  • 権利部(乙区)
    • 抵当権・根抵当権
      • 抵当権者が誰か
        →その金融機関に物件を持ち込めば融資を付け替えるだけなので、うまく借入させてもらえるかもしれない。既に付き合いがあれば尚更話が早い
      • 今までの所有者がだいたいいくらくらいで買ってきたか
        →売買時期や債権額や極度額、金融機関から推測。根抵当権は抵当権の110-120%くらいの金額で設定されることが多いので逆算する
        • ちなみに、仮に120%の金額としたら抵当権設定費用も2割増になり、借りる側としてはできれば避けたい。
      • 沢山抵当がついていないか、土地の価格を大幅に超えて抵当がついていないか
        • →売主の与信に注意。破産に巻き込まれないように気をつける。手付金が戻ってこないなど。
    • 抵当権以外の権利がついていないか
      賃借権、地上権、地役権、先取特権、質権などがついていたら注意。必ず事情を調査する。
  • 共同担保目録
    • 当該物件以外にも共同担保に入っている場合は、金融機関との調整が必要。
  • (補足)抵当権の抹消と金融機関との調整
    不動産の売買では売主は抵当権を抹消して買主に物件を引き渡すことが大前提です。大抵の契約書にその旨が謳われているはずです。というのも、抵当権を抹消しないままでおくと、以前の所有者である売主の借入金返済が滞ったときに、抵当権を実行され、新たな所有者である買主が所有権を失う可能性があるためです。なので通常の取引では、決済時に買主が支払った残代金により売主は借入金を一括返済し、所有権移転登記と抵当権抹消登記の申請を同時に行います。

    しかし、売買代金で返済しきれないような場合は金融機関が抹消に応じるか、応じてもらうためにはどうするか調整が必要です。また、共同担保がある場合も、当該物件の売買で返済した後の残債が残りの共同担保物件で担保できそうかどうか確認が必要です。金融機関に抵当権抹消に応じてもらえない場合は、売買ができません。

再建築不可の土地ではないか

  • 敷地が道路に2m以上接面しているか
    • 路地状敷地(旗竿地など)の場合は、竿の部分の一番狭いところも2m以上なければ建築することができません。
  • 敷地が接面している道路は建築基準法上の道路かどうか
    • 建築基準法上の道路とは
      • 昔からある道路で幅員が4m以上
      • 位置指定道路(近年設けられた幅員4m以上の道路で、役所の認定を受けたもの)
        • 道路の角部分には隅切りが必要、道路の延長は35m以内。※35mを超えるなら転回広場が必要、幅員6m以上なら転回広場不要。
      • 42条2項道路(幅員が4m未満しかない道路)→セットバック必要。次に建物を建てる時には、道路の中心線から2m離れた線まで敷地を後退させなければならない。後退した分の敷地は失われる。→「最初から無いと思え」というやつ。

土地のスペック

地積(公簿/実測)と価格帯と流動性

  • 公簿 or 実測
  • そのエリアにあった地積、価格帯かどうか。
    これは建物にも言えることですが、そのエリア内での取引に支障がない価格帯を意識する必要があります。例えば大阪なら淀屋橋近辺で土地10億というとよくありますが、大阪の港湾側下町の駅前にある中途半端に大きい土地建物で4.7億となると一気に流動性が低くなり、結果、大幅に値下げしないと売れない、というようなケースです。単純な坪単価の比較での安い高いだけではなく、その不動産の流動性も考えておかないといけません。

地域地区

  • 用途地域 (Wikipedia)
    2018年に田園住居地域が追加され13個になりました。wikiの3.参照表を眺めながら、建てられる建物と容積率・建ぺい率はざっくり覚えておくとよいです。複数の用途地域にまたがる場合、容積率は按分になります。
  • その他地域地区(wikipedia)
    用途地域は都市計画法と建築基準法により全国一律に定められていますが、特別用途地区や風致地区、高度地区等の規制内容は自治体ごとに規定されます。用途地域だけ確認しても全く安心はできません。

    例1)大阪市天王寺区生玉町付近は第二種住居地域で用途地域的には建ぺい率80%、容積率は300% or 道路幅員×0.6であるはずなのですが、夕陽丘風致地区内でもあるので実際の建ぺい率は40%以下で、容積率も300% or 道路幅員×0.4 とされています。前面道路幅員が4mだったら160%の容積率になります(大阪市風致地区内における建築等の規制に関する条例_第5条)。


    例2)大阪府吹田市の高度地区。11の区域に分けて高さと斜線で制限されています。なお、高度地区の斜線制限は後述の天空率でも緩和できないので注意が必要です。→全体図 (PDFファイル※ 2850KBと重め注意)

  • 都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限
    都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限
    重要事項説明書に60個弱記載されるアレです。特に景観法を背景にした自治体の条例では建物建築に様々な規制がかかることが多いので、仲介業者さんに聞くなどしてよく確認しましょう。マンション用地として買ったのに条例で3Fまでしか建てられない!というミスはたまに聞きます。
  • (補足)地域地区については自治体のポータルサイトなどで確認しましょう。

容積率・建物のボリュームに関わる項目

土地の価値は消化できる容積率に正比例します。そのためボリュームチェックは非常に重要です。マンション用地なら、何㎡の部屋が、何戸とれて、全体で容積率が何%消化できそうか、というチェックです

記事冒頭にも書きましたが、一棟収益不動産投資であっても、次の人が土地として取得するかもしれませんし、自分が長期保有した後、新築をするかもしれませんので、自分が取得しようとしている不動産の土地が、更地ベースでどれくらいの容積が消化できる土地なのか、新築すればどれくらいの収益を生むのかを把握していたほうがよいです。

用途地域ごとの指定容積率・建ぺい率・主な規制表

↑クリックで拡大できます。

前面道路と実効容積率(指定容積率と基準容積率の低い方)

  • 前面道路幅員が12m以上の場合
    用途地域の容積率(指定容積率)が採用されます
  • 前面道路幅員が12m未満の場合
    商業系地域では
    用途地域の容積率
    vs 前面道路の幅員×0.6 の低い方
    住居系地域では
    用途地域の容積率
    vs 前面道路の幅員×0.4 の低い方
    が採用されます。
     
    • つまり、容積率800%の商業地域でも前面道路幅員が4mしかなければ実効容積率は240%になります。大きな建物は建てられません。前面道路で建物の大方のボリュームが決まるので、道路幅員は非常に、非常に重要です。
    • なお、東京都の一部の地域(港区など)では上記の0.6(容積率低減係数)が0.8になります(いいなぁ
  • (補足)前面道路の幅員が狭すぎると建築費にも影響します。例えば、生コン車も小型車しか使えないほどの狭い前面道路の場合、生コンを運ぶ往復が増える訳です。そういう意味でも道路付けは大切です。「土地の価値、土地の価格は道路で決まる」と言っても過言ではありません。
  • (補足2)道路法上の幅員と建築基準法上の道路幅員は、必ずしも一致しません。仲介業者さんに聞くなどしましょう。

実際の消化可能容積の推定

実効容積率(指定容積率と基準容積率の低い方)が確定したら、次に考えるのは高さ制限等様々な規制を適用して、実際のところ、実効容積率のうちどれくらい消化できる土地なのか?ということです。ただ、これはやってみないとわからない部分が多く、更地からの投資であれば建築士等専門家の先生に相談してボリュームをいれてもらうのが良いです。

しかし、長期保有が前提の一棟の収益不動産を買う際にはそこまでできません。そこで僕は下記のようなことを頭にいれながら、取得する物件及び近隣で最近建てられた物件の容積消化率をみて、どれくらいの建物が建つ土地なのか考えています。素人の推測に過ぎないですが、何もしないよりはマシかなと思っています。

道路斜線

都心の不動産投資で一番戦うことになるのが道路斜線だと思います。現在、新たに企画する場合は後述の天空率で緩和する場合が多いですが、まだまだ道路斜線がかかった一棟収益物件を買うことも多いと思います。

買おうとしている物件はなぜその形状になっているのか?結果、どれくらい容積が消化できているのか?天空率で緩和できた場合どれくらい消化容積率があがりそうか?を把握しておくことは、出口価格の予想と、今後の土地の目利きにも役立ちます。

ポイントとしては

  • 勾配の適用角度は用途地域の住宅系が1:1.25 、住宅系以外が1:1.5 の2種類。この0.25の差が大きいです。角度にして約51度と約56度、この5度で消化できる容積率が結構違ってきます。
  • セットバック緩和。反対側の境界線がセットバック距離と同じ分だけ外側に移動したとみなせます。
    • 一定の条件を満たす物置や塀、自転車置き場などはセットバック内に含んでもよいです。
  • 昭和62年に適用距離というルールが追加されました。道路の反対側の境界線から一定の距離(商業地域だったら25mや30m等)離れた部分は道路斜線を気にしなくてよいです。規模の大きい建物がかなりの奥行きで道路斜線にかかっていたら昭和62年以前に作られたのだろうと遠目から見てもわかります。
    • 奥行きのある土地ならばセットバックもしやすく、結果容積が消化しやすくなります(これは天空率でも同じ。

      西友三軒茶屋店 道路斜線
      ↑西友三軒茶屋店 上の四角部分までが適用距離。右奥の高い部分の斜線までが後述の2道路緩和で、奥に位置する茶沢通りから2倍の距離(2A)なのだと思われる。なお、この近くの安曇野という蕎麦屋が美味しかった記憶。
  • 道路斜線の1.25緩和
    • 第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域、田園住居地域以外の住居系用途地域で前面道路幅員が12m以上の場合、前面道路の反対側の道路境界線からの距離が前面道路幅員の1.25倍以上の部分では道路斜線の勾配を1.25ではなく1.5としてよい。
  • 道路斜線の2道路緩和
    • 角地等で2つの道路の幅員がそれぞれ違うときに、諸々の条件を満たす範囲で、「狭い方の幅員」を「広い方の幅員」とみなして検討することができます。
      • ーーここから引用ーー
        第132条 2以上の前面道路がある場合
        建築物の前面道路が2以上ある場合においては、幅員の最大な前面道路の境界線からの水平距離がその前面道路の幅員の2倍以内で、かつ、35m以内の区域及びその他の前面道路の中心線からの水平距離が10mをこえる区域については、すべての前面道路が幅員の最大な前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。
        2 前項の区域外の区域のうち、2以上の前面道路の境界線からの水平距離がそれぞれその前面道路の幅員の2倍(幅員が4m未満の前面道路にあつては、10mからその幅員の1/2を減じた数値)以内で、かつ、35m以内の区域については、これらの前面道路のみを前面道路とし、これらの前面道路のうち、幅員の小さい前面道路は、幅員の大きい前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。
        3 前2項の区域外の区域については、その接する前面道路のみを前面道路とする。
        建築プレミアム 建築基準法施行令より引用させていただきました)

        道路斜線の2道路緩和
        ↑セットバック分を考慮しても斜線の延長線上と前面道路が対応していなそうだが、2道路緩和をつかって奥の道路幅員(12.727m)をこちら側の道路にも適用していると思われる。
  • 道路斜線の水面緩和
    • 公園、広場、線路、水路、里道、川に面している時、その空地の土地すべてが道路斜線の緩和に使えます。これが使えるとよいです。

      道路斜線水面緩和写真
      ↑これは水面緩和使ったのではないか?と思っている場所のgoogle航空写真。手前の斜線との比較。
  • 道路斜線の高低差緩和
    • 道路が土地の地盤面より1m以上低い場合の緩和措置。都心で投資をしているとあまり見かけないと思います。

隣地斜線・北側斜線

  • 隣地斜線
    • 隣地境界線上の一定の高さから、一定の勾配の範囲内で建物を建てる。
      • 一定の高さ
        • 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域を除く住居系用途地域は20m
        • 商業系・工業系用途地域は31m
      • 一定の勾配
        • 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域を除く住居系用途地域は 1:1.25
        • 商業系・工業系用途地域は1:2.5
    • セットバック緩和できる
    • 高低差緩和あり
    • 水面緩和もある。道路斜線と違って公園などの広場の幅員の1/2だけ外側に境界線があるとみなす。
      • 隣地斜線が原因で容積が大きく削られることはないと思っているのですが専門家の先生方、それでよいでしょうか?
        隣地斜線マンション
        ↑左側の方が高い位置から隣地斜線が始まっているので、敷地の境界線は建物の中間ではなく、中間から少し右側であろうと遠くから見てもわかる。(わかって何になるのかと聞いてはいけません
  • 北側斜線
    • 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域に適用される。
    • 北側隣地境界線上の一定の高さから、一定の勾配の範囲内で建物を建てる。
      • 一定の高さ
        • 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域は5m
        • 第一種・第二種中高層住居専用地域は10m
      • 一定の勾配
        • 1:1.25
    • 真北方向にある道路がある場合は道路の反対側の境界が基準になるので北側斜線回避という意味では有利。居住系で方角が北向きだと嫌がられますが。
    • 高低差緩和あり
    • 水面緩和は隣地斜線と同じように公園などの広場の幅員の1/2だけ外側に境界線があるとみなす。

天空率(魔法の類ではないらしい)

ご存知のように2003年1月から天空率が使えるようになりました。今まで見てきた高さ制限(道路斜線・隣地斜線・北側斜線)により容積が満足に消化できない土地であっても、天空率制度を利用して回避できるケースが多数あります。実務的には道路斜線の緩和を検討するというのが一番多いです。

従来の斜線による一律の仕様規定ではなく、建物の全体を見た時の日当たりや圧迫感で判断する性能規定になったので、デザインの自由度も増しました。

我々不動産投資家は「天空率さえ適用すれば容積消化できるだろ」と天空率を魔法の杖的に考えがちですが、そんなことはなく従来の道路斜線と同じようにセットバックが大きいほど容積を消化しやすいですし、間口を大きくとれずひょろ高い建物になりがちであったり、天空率測定位置に向かって建物の角を削ったり、天空率は天空率で難しい問題があるようです。何より先生方にCADを使って実際にやってもらわないと、実際容積が消化できるのかどうか、素人には全然わかりません。

専門家に打診する前に知っておくべきこととしては

  • 道路斜線、隣地斜線には使える
  • 北側斜線は北側に道路がなければ使える?(これはよくわからないので調査中です
  • 高度地区の斜線制限では天空率は使えない
  • 日影規制にも使えない
  • 固定された算定ポイントから空が見える割合を計測してるんだな、とざっくり理解しておく

くらいでしょうか。

では、既存の一棟収益物件を買う際に僕が何を見ているかというと、周辺の2003年以降に建てられた、同じような条件の物件の延床面積などを調べて、そこから地形と地積から予想したレンタブル比を割引くなどして容積消化率を想像しています。謄本をあげるよりも、建設データバンクさんから建築看板情報を検索させてもらうことが多いです。どう考えても容積を全然消化できていない新しい物件が複数あったら、その土地ではそれが限界なのかもしれませんし、別の何かを見落としているのかもしれません。

↑商業地域内などで、天空率が使われたひょろ高い建物は上の写真のように建物正面の角(バルコニー等)が削られていることが多いです。なお、両サイドの物件は道路斜線で削られています。

日影規制(敷地の北側に注目する)

日影規制のポイントとしては

  • 北側に道路があると日影の影響が少なくなるので有利
  • 日影規制は、建築物を建てる場所の規制値ではなく日影を落とすところの規制値が適用されます。日影規制がないはずの商業地域でも、土地の北側になどに住居系用途地域があると、日影規制にかかり容積を消化できないことがあります。異なる用途地域の境目付近の土地を取得する際には気をつけましょう。

    青山通りaoビル
    ↑青山通りに面する「Aoビル」
    北側は第1種住居地域なので日影規制を回避するデザインに。
  • 建物の横幅が東西に長いと北側へ影の影響が大きくなり容積を消化しにくいです。南北に長いと北側への影響が比較的少なくなります。
  • 敷地が河川に接している場合や、敷地が隣地より1m以上低い場合には緩和があります。
  • 天空率で日影規制は緩和はできません。
  • 日影規制は道路斜線などに比べるととっつきにくい感じがする(僕だけかな)ので補足しておきます。
    • 規制される日影は、一年のうちで影の長くなる冬至の真太陽時(しんたいようじ)の午前8時から午後4時 までの日影。真太陽時は南中の時刻を12時とするもの。普段使う明石市基準の中央標準時とはズレがあります。
    • この規制では実際の地面にできる日影ではなく、地面より高いところを想定して、そこの日影を規制します。これが前掲の表の測定面という項目です。
    • 日影規制は二段階の規制になっていて、隣地境界線から5mの範囲、10mの範囲で規制されます。
    • 例えば、近隣商業地域で高さが10mを超える建物の建築を計画したところ、その地域の日影規制は「測定面が6.5m 、規制時間 (5mライン・10mライン)=(5・3)」だったとします。

      これはつまり「冬至の真太陽時の午前8時から午後4時 までの日影のうち、平均地盤面から6.5mの高さのところにおいて、隣地境界線から5mのラインまでは5時間以上日影をつくってはいけませんよ、なおかつ、隣地境界線から10mのラインまでは3時間以上日影をつくってはいけませんよ。そのような建物を建築しなさいよ」という意味なのです。

特定道路を接続することによる容積率緩和がつかえないか

前述の通り、土地の容積率は指定容積率と前面道路から計算された基準容積率の低い方が採用されます。皆さんは何度も「大通りに面してたら商業地域で容積800%なのに、横に伸びる幅員6mの道路をちょっと入っただけで6m×0.6=360%の容積率になってまうわん」と泣いていましたね。。。そう、昭和62年までは。

昭和62年に特定道路を接続することによる緩和(建築基準法第52条第9項)というのができて、

  • 敷地の前面道路の幅員が6m以上 
    (敷地までの間に幅員6m未満となる箇所があると緩和不可)
    かつ
  • 特定道路(幅員15以上の大通り)から敷地までの距離が70m以下

であれば「大通りに近いし何かあっても逃げやすそうやから多目にみたるわ」とのことで、容積率の緩和が受けられるようになりました。

まず、上図の前面道路幅員のWrと敷地までの距離Lから、割増数値Waを算出します。割増数値の分だけ前面道路の幅員を割増できます。

Wa=(12-Wr)×(70−L)÷70

例えば前面道路Wrを6m 、大通りまでの距離Lを7mとすると
Wa=(12-6)×(70-7)÷70=5.4
5.4m道路が広いとみなしてよいということになります。もとの幅員は6mだったので、敷地の前面道路を6m+5.4m=11.4mとして計算してよいようです。そんな馬鹿な。

すると、800%の商業地域でしたので、前面道路幅員に0.6(容積率低減係数)をかけて
基準容積率=11.4×0.6=6.84=684%
なんと360%だと思っていた容積率は特定道路による容積率緩和を適用すると684%でした。

容積率800%の商業地域と仮定して、LとWrでマトリクスを作成してみました。

特定道路から近いほど、前面道路の幅員が6mに近いほど緩和の効果が高いことがわかります。しかし、実務では道路斜線、天空率で容積が削られることも多く、また適用距離の測り方にも細かいルールがあり、いい土地残ってた!と思ったのに精査してみると特定道路緩和適用不可、ボリュームをいれてみても全然ダメということもよくあります。ただ、それでも、大通りに近くて、前面道路幅員6m以上12m未満の土地を見かけたらこの特定道路の緩和を考えてみる価値は大いにあります。

↑大通りを歩くと、特定道路緩和を使ったと思われる物件が結構あります

容積率不算入の項目

  • 自転車置場や車庫は延床面積の1/5までは容積対象床面積に含めない。
  • 共同住宅の共用廊下、共用階段は容積対象床面積に含めない。
    • (一棟収益マンション投資や共同住宅新築をメインでしていると、ホテルなどを計画した際に建物規模の割に容積を食いすぎててびっくりする)
  • 住宅の地下室についても、住宅部分の床面積の合計の1/3までは容積対象床面積に含めない。この場合の地下室とは、天井高が地盤面から1m以内で、地下室天井高の1/3が地盤面より下にあるものに限る
  • 2018年9月から宅配ボックススペースも容積対象床面積に含めなくてよくなりました。
  • 天井高が1.4m以下のロフト(物置)はその階の床面積の1/2まで容積対象床面積に含めない。

総合設計制度が使えないか

総合設計制度は敷地内に公開空地を設けた上、様々な基準を満たすことで建築制限を緩和できる制度です。適用できる土地、建築物の条件は自治体によって異なります。敷地面積は500㎡以上というのが多いです。ただ、その最低規模と建物の制限がなかなか厳しく個人の不動産投資家が使う機会はあまりありません。なお、日影規制は総合設計制度で緩和できません。以下、大阪市の例です。
【追記→東京では以下の大阪の総合設計制度の例と全く違うそうなので注意してください。※ twitterで教えてもらいました。ありがとうございます。】

  • 大阪市 【許認可】総合設計制度(法第59条の2、他)
    • 用途地域ごと、用途ごと、使う制度ごとに条件は違います。例えば、
      • 上図の3.②都心居住容積ボーナス制度(商業地域)だと
        • 敷地面積500㎡〜
        • 分譲マンションだと1戸あたり55㎡以上(全戸の平均が65㎡以上なら、一部を55㎡以下にできる)
        • 賃貸マンションだと1戸あたり50㎡以上(全戸の平均が60㎡以上なら、一部を50㎡以下にできる)
      • 上図の6.マンション建替型総合設計制度だと
        • 敷地面積300㎡〜
        • 住戸規模不問(※市長に公益上やむをえないと認められた場合のみ)
        • 高さ制限の緩和は不可
    • (私事です)総合設計制度で建てられた古い物件を所有しているのですが、その物件については「天空率がある今、この規模なら総合設計を使わなくても建ったのでは?」と思っています。今新たに計画する場合も、500㎡を少し超えるような土地だと総合設計のメリットはあまりなく、逆にクリアしなければいけない条件が増えるだけでよくないなぁと思っています(設計の専門家ではないので詳しくはわかりませんが。

その他建築規制や緩和

  • 東京ワンルーム条例、東京都建築安全条例(第19条の窓先空地等)
  • 絶対高さ制限の緩和
    • これも、あまり詳しくないのですが、平成15年に天空率ができてから、各自治体が絶対高さ制限を導入するということが多くなった→しかし、既存の建物を建て替える場合は、その既存建物の高さまでは建ててよいと認める自治体がある(目黒区など?)→そのような物件を買って建て替えれば現行の高さ制限を超えた物件を建てられる(更地で買ってしまうとだめ)→更地にしない方が売れやすい物件が出現?
  • コージェネレーション施設、太陽光発電設備、燃料電池設備、自然冷媒を用いたヒートポンプ・蓄熱システムを導入することによる容積緩和。高齢者向け施設など。
  • 特例容積率適用地区
  • 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)
    床面積2,000平方メートル以上の「特別特定建築物」を建築する場合、容積率が緩和されるようです。大阪府だと延べ面積の1/10を限度として緩和。

大阪の方へ_船場建築線(船場後退線)と船場都心居住促進地区ボーナス制度

※大阪以外の方は読み飛ばしてください。
船場建築線(船場後退線)も容積率に大きく関わる項目なので触れておきます。
なお、大阪市で船場後退について知らない不動産屋は全員もぐりと思ってよいです。

船場建築線(船場後退線)
大阪市HPより クリックで拡大できます

大阪市の上図の範囲は土地の高度利用や都市基盤の整備等を目的に建築線が指定されています。「42条2項道路(幅員が4m未満しかない道路)はセットバックが必要」と前のほうで書きましたが、その地方ルールみたいなものです。具体的には、上図の船場地区地域においては

  • 幅員10m未満の南北方向の道路は道路中心線から5m後退した境界線から建物を建築できる
  • 幅員12m未満の東西方向の道路は道路中心線から6m後退した境界線から建物を建築できる
  • 建築線が交差する部分には2.5mの隅切りを設ける
  • この船場建築線は建築基準法における道路境界線と扱う
    • 船場建築線より道路側の土地は容積率や建ぺい率を計算する際の敷地面積に含めない
  • この船場建築線は所有権の境界線ではない
    • 固定資産税はどうなるのか→建築制限をうける後退した面積の10%のみ課税対象。
  • 地下に建物を建設することは可能(4m未満の道路のセットバックとは違いますね。
  • (補足)この地域は6m又は8mの道路で形成された街だったのですが、この建築線によって道路幅員による基準容積率がUPし高度利用できるようになった訳です。物件概要書には何も書いていなかったり、「船場後退あり」としか書かれていないものが多いので後退後の敷地面積を概算し、地形はどうなるか考えましょう。
↑親切なタイプの物件概要書

船場都心居住促進地区ボーナス制度
船場建築線の指定地区で、現行の指定容積率が600%の土地であれば、複数の条件を満たすことで容積率が最大800%まで認められます。非常に良いです。

  • 敷地面積300平方メートル以上
  • 建ぺい率80%以下
  • 船場建築線の後退部分を歩道にすること
  • 道路側壁面後退2m以上
  • 容積率600%を超える部分は住宅(専有面積40平方メートル以上)にする
  • その他大阪市に要相談

建ぺい率

  • 角地の建ぺい率緩和
    • 特定行政庁が指定した条件を満たした角地→建ぺい率10%加算
    • その他、2本の道路に挟まれている場合や公園や河川など空地に接する場合も建ぺい率の10%緩和を受けられることがあります。地方自治体ごとに条件が異なります(プロの方でも見落としがちなポイントかもしれません?
  • 耐火建築物等の建ぺい率緩和
    • 防火地域内で(耐火建築物or延焼防止建築物)→建ぺい率10%加算
    • 準防火地域内で(耐火建築物or延焼防止建築物or準耐火建築物or準延焼防止建築物)→建ぺい率10%加算
  • 角地の緩和と耐火建築物等の緩和の両方を適用して20%加算とすることも可能。

道路付け等

  • 角地、二方道路、三方道路等
    • もちろん道路に多く接している土地の方が価値が高いです
  • 出世する可能性のある土地か
    • 隣地を買収すると大通りに面して価値があがる等。これは意外と重要で、大きく儲けている方は意識されていることが多いです。
  • 42条2項道路(幅員が4m未満しかない道路)→セットバック必要
  • 隅切りを設けなきゃいけない場合
    • 幅員6m未満の道路が交わる角に接する敷地では、一辺を2mとする二等辺三角形の部分を空地としなければならないことが多いのですが、各自治体により条件が違います。
    • 大阪市の場合
      • 歩道がない幅員6m道路が曲がるところに隅切り
      • 歩道がない幅員6m未満の道路と歩道がない幅員10m未満の道路の交差点に隅切り
      • 隅切部分は敷地面積に“含める”

(角敷地における建築制限)
第五条 都市計画区域内において、歩車道の区別がない幅員六メートル未満の道路(専ら歩行者の通行の用に供するものを除く。以下この項において同じ。)が屈曲する箇所又は歩車道の区別がない幅員六メートル未満の道路が歩車道の区別がない幅員十メートル未満の道路と同一平面で交差する箇所にある敷地にあっては、その角地の隅角をはさむ辺の長さ二メートルの二等辺三角形の部分(地盤面下の部分を除く。)に突き出して建築物を建築し、又は擁壁その他の工作物を築造してはならない。ただし、道路に街角の切取りがある場合又は角地の隅角が百二十度以上の場合は、この限りでない。

○大阪府建築基準法施行条例

地形(じがた)特に間口が重要

整形地か不整形地か。間口と奥行。一般的に間口は広いほうがよい。地積測量図を取り寄せて、現地で確認しましょう。下記のように同じ地積でも間口や奥行によって建てられる建物や建築費、収益が大きく変わってきます。素人では判断できないことが多いので、事前に建築士等専門家に相談するほうがよいです。

間口と建てられる建物のボリューム(塔状比)

間口の小さいひょろ高い建物は構造的に不安定で、建物を積める高さにも限界があります。構造計算をするときには塔状比(建物高さ÷建物の短い方の辺)を考慮する必要があり、一般的には塔状比6が限界とされています。容積率が800%の用途地域でも間口が小さければ大きい建物を建てることは現実的に不可能です。

例えば、容積率800%の地域の間口4.9mの土地にマンションを建てようと計画したとします。建設には足場のスペースを確保しなければなりませんし、民法でも隣地境界から50cm離すこととされています。そして建物の外壁のタイルの厚さ+壁芯までの距離=10cmとすれば、建物の幅としては4.9m-((0.5m+0.1m)×2)=3.7mになります。

塔状比は6が限界でしたので、3.7×6=22.2mが最大の高さということになります。22.2mだと1フロア3mとしても7階建のマンションしか建ちません。容積率は半分も消化できない可能性が高いです。容積800%の土地だから15階建マンションを建てて容積を全部消化してやろう!と思っても無理な訳です。

では、近隣に間口8.7mの土地があったらどうでしょうか?全体の地形にもよりますが、建物の幅は8.7m-((0.5m+0.1m)×2)=7.5m 7.5m×6(塔状比)=45mが最大の高さになり、無理をすれば14-15階建のマンションも建てられるかもしれません。間口によって“物理的に”建てられる建物の規模がこれだけ変わってきます。

(補足)建築基準法では、隣地境界から建物を何センチ離さなければならないという決まりはないのですが、民法では「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と定められています(第234条)。
 民法は私法なので罰金や命令といったものを課せられることはありません。そして、隣地所有者と合意がとれていれば境界線に接して建築することも可能です。実際、都心部の商業地域では、皆少しでも土地を有効活用したいので、ギチギチに建てることはよくあります。
隣地境界ギリギリに建築

間口と建築費

構造的に無理があるということは、その分建築費が高くなるということです。いつもお世話になっている建築士の先生に聞いたところ、塔状比が5.5を超えてくると建築費が猛烈にあがるそうです(猛烈とはどれくらいか?と聞いたところケースバイケースとのことです)。杭の本数が多くなったり、壁を厚くせざるを得なかったり、コンクリートの質(強度)も上げなければならなかったりして、結果採算に合わないことが多いそうです。

また、単純に間口が小さいと杭打ち機などが入らない、首を振れないという場合もあり、建築費が高くなったり、そもそも建築が難しいケースもあるようです。

間口と収益

不動産投資を始められたばかりの方は、間口がなぜ大きく収益に影響するのか?と疑問に思われるかもしれません。そこで、下の画像のような同じ面積で間口の違う駐車場を考えてみてください(極端な例ですが)。上は6台駐車できるのに、下は車の出入りを考えると3台しか駐車できません。車の出し入れもしにくいので収益は上と比べて半分以下でしょう。

また、この地形で敷地面積がもう少し大きいマンション用地だとしても、間口が狭い下の方はワンフロア2戸しかとれないかもしれませんし、2戸のうち裏側の1戸は道路に面していないので、周りは隣地建物となり室内が真っ暗で賃料も低くなるかもしれません(各戸独立タイプという新たな売りはできるのですが、壁を共有していないということは、もちろんその分コンクリート等の量も増え建築費も上がります)。

じゃあ、上の方の地形なら完璧かというと、恐らくそうではなく、これだけ横長だと道路斜線を後退によって緩和できず、天空率を使っても後退ができないので同じように下の土地よりとても不利で、容積を全然消化できない可能性が高いです。(※このあたりは専門家の先生に聞いてください。

このように地形で収益が大きく変わってきます。

方角

  • 道路付けが良いほうが明るくてよい
  • 南→東→西→北の順に評価が高い

住宅地は商業地域よりも日当たりは求められます。方角ごとの土地価値のイメージはこんな感じです(南側土地を100とした時の土地の価値)。完全に私見なので参考まで。

(補足)都心の単身者用マンションなどでは、北向きでもそこまで気にされません(普通に賃貸も決まります)が、高価格帯の賃貸マンション用地、分譲マンション用地はやはり南向きが良いです。

地勢

高低差がある土地だと建物建築時に擁壁や土留めなどの外構工事が必要になり、建築費が割高になる場合が多いです。

立地条件・ハザードマップ

  • 駅徒歩
    • 都心では非常に重要です。10分以下か10分を超えるかで賃貸ポータルサイトの検索回数が大きく変わるようです。現地調査では実際に駅から歩いてみましょう。なお、車社会のエリアでは駅徒歩はさほど重要ではありません。
  • 交通量
    • 閑静な住宅街の近くなんだけど幹線道路沿いというような土地は騒音や排気ガスが嫌気されて住宅地としての価値は下がります。都心の商業地域であればほとんど気にしなくてよい(賃貸はつく)と思います。
  • 周辺環境
    • スーパー、コンビニまでの距離
    • 学区
    • 宗教施設、火葬場、墓地、廃墟、煙・臭いを出す重飲食店などの嫌悪施設の有無
    • 大学や工場、大企業など特定の需要発生施設に依存した立地ではないか
  • 日照
    • 物件概要書で南向きと記載があっても安心はできません。前に高層マンションがあったりして、いちばんよい時間帯なのに日が当たるのは上階のみということはよくあります。
                   
  • ハザードマップの確認
    • 地震
      • 断層上に位置していないか
        • 地理院地図
          断層や撓曲(とうきょく)の上の物件には投資しないと決めている投資家は結構います(資産家に多い)。投資エリアの断層や撓曲の分布は頭にいれておきましょう。大阪なら
          • 上町断層
          • 桜川撓曲
          • 住之江撓曲

保有コスト(固定資産税・都市計画税)の確認

仲介業者に評価証明写しor固定資産税課税明細書写しなどをもらって確認しましょう。

最適な用途

現実の使用は必ずしも最有効の使用とは限らないので、潜在的な最有効の使用を判断し、発見することが不動産鑑定のはじまりである。現状が畑地であっても、畑地の値段にしばられてはならない。仮にその畑地が住宅地として性質をもっているならば住宅地として鑑定評価しなければならない。

日端 康雄(1974) 日本不動産総覧 p462 読売新聞社

エリアや立地、土地の基本情報から実際の最有効利用は何だろうかと考えてみましょう。現在はマンションが建っていたとしても、ビルやホテルの方が需要に応える土地かもしれません。つまり、○○用地の○○に何を入れたら一番高く売れそうか。誰が今一番この土地にお金を出しそうか(コロナ禍以前、2019年頃の都心だったらホテル業者さんでしたね)。周辺の売買事例を調べたり、新築物件の謄本をめくったりして、改めて考えてみましょう。

その他気をつけること

  • 都市計画道路上にある物件ではないか
    • 建築規制
      • 階数が2以下で、地階を有しない
      • 主要構造が木造or鉄骨造orコンクリートブロック造。鉄筋コンクリート造などは不可。
  • 土壌汚染の可能性はないか
    • 工場跡地、クリーニング施設跡地などでは可能性は高くなります。私は経験がないのですが、土壌が汚染されていると、土壌改良が必要になり、掘削除去の場合3-10万円/㎡、不溶化工事の場合1-3万円/㎡というような費用がかかるようです。
  • 支持層の深さ(土地取得前に知るのは困難)
    • マンションやビルを建築する時は支持層まで杭を打ち込む必要があり、支持層が深いとそれだけ建設費が増えます。支持層とはN値(地盤の強度を示す指標)が50以上の硬い地層が5m連続する層と考えてよいです。
    • 土地取得前に知るのは困難ですが、投資対象エリア近隣の地盤調査データを専門家に教えてもらうなどすると建築費推定の参考になるかもしれません
  • 埋蔵文化財 (※2021年1月4日に友人に指摘され追記しました)
    • 試掘調査は原則公費負担だが、本格調査が必要と判断された場合、その発掘費用は事業者側で負担。数百万円から数千万円になることも有り。新築工事着工も遅れます。
  • 地中埋設物がある可能性
    • コンクリートガラ、杭、井戸、浄化槽、構造物地下室、下水道管などが地中に残っている場合がある。土地の売買契約前に気づくことは難しい。土地取得後、埋設物が出てきたときの撤去費用負担は原則として買主。特約で売主と定めることもできる。
  • 近隣再開発計画の有無
    • 近くの駅が再開発されてエリアの中心が変わることがあります。街の変化は地方ニュースなどで追っていきましょう。
  • 境界が確定しているか
    • 確定していたほうが良いですが、確定していなくても取得後に時間をかけて解決可能な場合多いので個人的にはそこまで気にしていないです。
  • 囲繞地(いにょうち)ではないか
    • 袋地と公道を行き来するために通行できる土地で、袋地の所有者は通行する際、囲繞地の所有者に特別な許可を得る必要はない囲繞地通行権)。基本的に囲繞地の所有者は通行を拒否することはできません。囲繞地通行権を持つ袋地の所有者は、囲繞地の所有者に対して通行料を支払うことになります。
  • 擁壁の有無
    • 1961年以前に建設されている場合、擁壁が現行の宅地造成等規制法の基準に適合しておらず、建て直しが必要になることが多いです。かなり費用がかかります。
    • その他、1961年以降に建設された擁壁でも不適格擁壁であるものがあります。
    • 不適格擁壁が敷地内にある場合、建築確認ができるかできないかはケースバイケースです。調査が必要です。
  • インフラ状況
    • 上水道の引込、下水道の引込or浄化槽、都市ガスの引込orプロパン
      各引込に費用がかかる場合があります。都心の不動産投資で意識することはないと思いますが。
  • 敷地の前の道路に消火栓等がないか
    • 消防用機械器具置き場や消防用防火水槽から5m以内の範囲には車を駐車できません。敷地と近い場合、車庫等がつくれない可能性があります。
  • 地目
    • 農地(田・畑)ではないか。宅地に転用する場合は農地法の許可が必要です。
  • 私道に接する土地
    • 私道であっても、各自治体に『公衆用道路』と認められれば固定資産税・都市計画税・不動産取得税が非課税になります。申請しないまま税金を払っている人もいるようです。
    • 道路やインフラ整備の費用負担が必要になる場合あり
  • 最低敷地面積(開発等)
    • 自治体によっては最低敷地面積が定められてます。例えば2020年12月現在、大阪府箕面市では第一種・第二種住居専用地域の戸建ての土地は150㎡以上と決められています。
      では、ここに300㎡の戸建用地と299㎡の戸建用地があったらどうでしょうか。300㎡の土地は分筆して150㎡×2として売ることが可能ですが、299㎡の方はそのまま売るしかなくなります。広いとその分価格は高くなり、一般的に流動性は落ちて、坪単価は299㎡のほうは低くなるでしょう。たった1㎡の差で価値が変わってくることがあります(参考:建築基準法による主な制限 – 箕面市 PDFリンク)
      • なお、大阪市に最低敷地面積はありません。
  • 土地を取得する場合の建築条件の有無
    • 建築条件付きの土地=土地契約と建築契約をセットで取引するということ
  • 建築協定
    • こういう地域・町並にしよう!と土地の所有者等が自主的に定めた権利制限。高級住宅街に多い。例えば日本屈指の高級住宅街の六麓荘町の建築協定では
      • 1区画につき400㎡以上で1戸建て。個人専用住宅のみ。
      • 地階を除く階数は2以下
      • 建ぺい率 30%以下or40%以下
      • 門扉は原則内開き
      • 敷地の4割以上(地区により3割)は庭として緑地にする
      • 緑地部分10㎡につき、高木1本と中木2本を植えること
        などと決まっています(参考:六麓荘町建築協定
        • なお、町内会の入会金は50万円
    • 第三者効
      公告後に土地所有権や借地権、建物賃借権を取得した人についても建築協定の効力が及びます。
  • 敷地内に高圧線がかかっていないか
    • 使用電圧が17万Vを超える場合と超えない場合で建築規制が異なってきます。
  • 市街化調整区域ではないか
    市街化調整区域では原則建物は建てられません。山間・山麓部近郊での売買などでは注意しましょう。

参考にしている建築基準法の資料

おわりに

まだ何かありそうな気がしますので、思い出したら追記します。

なお、この記事には間違っている箇所やすでに法改正されている事項もあるかもしれません。お手数ですが、適宜一次ソースにあたって内容を確かめるなどしてください(最初に書くと記事に説得力がなくなるのでここに書くという枯れたライフハック

次回は土地相場編、その次に建物編を書ければと思っています。今回もお読みいただきありがとうございました。

(追記)次回更新について→追記の追記

次回のブログ更新は2021年1月末頃を予定しています。建物についてまとめたいと思います。宜しくお願いします。
更新が大幅に遅れてしまいすみません。建物の記事ではなく、建物チェックも含めたスクリーニング記事になりました。
[1-6]不動産投資家のための収益物件の選別手順127steps